はじめに
「転倒する」と聞くと、「足の力が弱まっているのかな?」と思う方も多いかもしれません。しかし、実は足の力だけでなく、手の握力も非常に重要です。
転びそうになった時、人はとっさに何かを掴もうとします。その際に、手で体を支える力が足りないと、転倒してしまうことにつながります。そのため、手の握力は転倒予防において非常に大切な要素となります。
もちろん、全身を鍛えられるのが一番ですが、全身運動は時間もかかり、何より継続が難しいものです。だからこそ、今回は簡単で継続しやすい工夫や体操に焦点を当ててご紹介していきます。
体操を続けるための工夫
体操を続けるのはなかなか大変ですが、ちょっとした工夫で継続しやすくなります。今回は、特に効果的な2つの方法をご紹介します。
1. 仲間と一緒に行う
一人だと継続が難しいと感じるなら、切磋琢磨できる仲間と一緒に始めてみましょう。
例えば、デイサービスに通うのも一つの方法です。デイサービスは、要介護状態にならないように、体操や頭の体操に積極的に取り組める施設です。ただし、デイサービスは介護認定が出ていないと利用できません。
介護認定を受けていない方には、トレーニングジムや地域のトレーニング施設への足を運ぶことをおすすめします。最近では、安価で利用できるジムや、女性専用のジムなども増えています。滋賀県には「カーブス」という女性専用フィットネスがあり、専属のトレーナーがついて指導してくれるので、安心して通うことができます。
それでもハードルが高いと感じるなら、ウォーキングがおすすめです。少し早起きして、友達やご家族を誘って一緒に歩いてみましょう。何事も最初は緊張しますが、小さく始めていけば、落ち着いて行動できます。
2. 簡単な体操にする
二つ目の工夫は、**「簡単な体操にする」**ことです。
人はついつい「自分にはできる」と思い込んで、難しい体操や時間がかかる体操をしようと考えてしまいがちです。しかし、それでは継続ができませんし、体操すること自体が億劫になってしまいます。
そのため、**「簡単な体操」**にすることが非常に重要です。
例えば、**「グーパー体操をご飯の前にする」**のはいかがでしょうか。グーパー体操は、手を握ったり開いたりするシンプルなトレーニングです。慣れてきたら足の指でもやってみると、転倒予防の効果がさらに高まります。
どんな体操も、継続しなければ効果はありません。小さいことをコツコツ続けるために、「仲間と一緒にする」と「簡単な体操にする」という2つのポイントをぜひ意識してみてください。
転倒した時に気をつけること
もし転倒してしまったら、何に気をつけたら良いのでしょうか。
まず大切なのは、**「病院に行くこと」**です。転倒は、見た目では大丈夫そうでも、打ちどころが悪いと後から症状が出始めることがあります。「見た目で大丈夫そう」「出血していないから大丈夫」と考えるのはやめましょう。もしかしたら、頭の中で出血している可能性も考えられます。
転倒したら、必ず病院に行きましょう!
特に、頭を打った可能性がある場合は、取り返しのつかないことになる場合もあります。「呂律が回らない」「手が痺れる」「表情がいつもと違う」と感じたら、すぐに病院を受診してください。
もし外傷がなく、すぐに病院に行けない状況ならば、最低でも1日は安静にして、状態をよく観察してください。
転倒しないための環境づくり
転倒の怖さを理解した上で、次は転倒を予防するための環境づくりについてお話しします。上記の体操以外にも、**「環境を整える」**ことが非常に重要です。
これは、よく耳にする**「バリアフリー」**の考え方です。高齢者や障がい者などが生活していく上で障壁(バリア)となるものを取り除き(フリー)、安全に過ごせるようにするという意味です。
具体的な対策をいくつかご紹介します。
リビングの場合
- コードの配線は歩く動線を避け、壁に沿わせるか、部屋の奥にまとめるようにしましょう。
- 引っ掛かりやすいカーペットやこたつ布団は使用せず、めくれやすいカーペットの下には滑り止めを敷きましょう。
- 床に物を置かないようにしましょう。
- 1cmから2cmの段差はつまずきやすいため、スロープをつけるか、手すりをつけると良いでしょう。
玄関の場合
- 手すりをつける。
- 玄関マットの下には滑り止めを敷く。
- 靴の着脱のために椅子を置く。
- 上がり框が高い場合は踏み台を置く。
廊下の場合
- 手すりをつける。
- 床に物を置かない。
- 転倒の原因になる滑りやすい靴下やスリッパは使用しない。
- 足元がよく見えるよう照明を明るくする。
- 階段にすべり止めをつける。
ベッド(寝室)の場合
- ベッドを壁に面するように配置し、片方からの転落リスクをなくしましょう。
- ベッドガードと呼ばれる柵を利用する(※)。
- 万が一、転落しても衝撃が緩和できるよう低床のベッドに変更する。
- ※ベッドガードを使用する際には、柵やベッドとのすき間に首や体の一部が挟まらないように注意してください。
お風呂の場合
- 椅子に座って着替える。
- 入口の段差が高い場合は、すのこやスロープで段差を小さくする。
- すべりにくい床材にするか、すべり止めマットを敷く。
- 手すりをつける。
リビングだけでもこれだけの転倒リスクがあることが分かります。ホームセンターに行くと対策グッズなども売っていますし、100円ショップでも手に入るものもありますので、ぜひ探してみてください。配線などは壁に沿わせるのが一番ですが、それが難しい場合は道具をうまく活用していきましょう。
まとめ
転倒しないように、日々の生活から見直していきましょう。多くの人は「転倒してから」対策を考え始め、ご家族が慌てて対応する姿をたくさん見てきました。
しかし、転倒は予防できます!
まずは、健康であることが大切です。食事、運動、睡眠をしっかり管理しましょう。 そして、転倒リスクを考えた環境に整えていくことも重要です。
今からでも少しずつ行動することで、安心・安全な生活を送れるようになります。
最後に一言お伝えします。私は、一度の転倒で寝たきりになったり、認知症が進んで一人では生活できなくなった方をたくさん見てきました。
一人でも多くの方に、健康で長生きしていただきたいと心から願っています。
そのためにも、しっかり勉強して、少しでも明るい未来を歩んでいきましょう!
ありがとうございました!
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