「死にたい」と言われたら?介護現場で寄り添うための第一歩

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はじめに

介護や支援の現場で、利用者の方から突然「死にたい」という言葉を聞くことがあるかもしれません。そうした時、私たちはどのように対応すれば良いのでしょうか。動揺したり、焦ってしまったりすることもあるかもしれませんが、適切な対応を知っておくことで、利用者の方に安心感を与え、そして必要な支援へと繋げることができます。

結論:受け入れ、寄り添い、言葉を繰り返す

利用者の方から「死にたい」という言葉が出た際、最も大切なのは「受け入れること」、そして「寄り添うこと」です。

具体的には、利用者の方の言葉を繰り返すことから始めましょう。例えば、「『死にたい』と思われているのですね」というように、相手の言葉をそのまま復唱します。これには「あなたの話をしっかり聞いていますよ」というメッセージが含まれており、相手の気持ちを否定せず、しっかりと受け止めている姿勢を示すことに繋がります。

私の体験談:先輩からの学び

以前、私自身が利用者さんの「死にたい」という言葉にどう向き合えばいいか分からず、戸惑った経験があります。

ある日の昼食後、利用者さんとお話していると、突然「もう体がうまく動かせないし、死にたいわ」と言われました。私は驚いて、とっさに「そんなこと言わないでくださいよ。人生まだまだこれからですよ」と返してしまいました。すると、会話はそこで途切れてしまい、利用者さんは黙り込んでしまいました。

その日の後、先輩から「あの対応は間違っている」と指摘されました。理由は、**「その人の気持ちに寄り添っていないから。『死にたい』という心の叫びを受け入れていない」**というものでした。

そこで私はもう一度、利用者さんの元へ声をかけに行き、先ほどの対応について謝罪しました。そして、先輩に教わったように、「『死にたい』と思われたのですね」と、利用者さんの言葉を繰り返して聞いてみました。すると、利用者さんは「今までできていたことがどんどんできなくなっていく。楽しみにしていたサロンにも参加できなくなってしまった」と、その胸の内を教えてくださいました。

この時、「死にたい」という言葉の裏には、こんなにも深い思いが潜んでいたのかと、深く学ぶことができました。私の安易な否定の言葉が、利用者さんの心を開くことを妨げていたのだと痛感した出来事です。


やってはいけないこと:否定する

私の経験からも分かるように、「そんなこと言ってはいけませんよ!」「まだまだ人生これからですよ」といった言葉は、相手を励ましているつもりでも、実は相手の気持ちを否定していることになります。利用者の方が抱えている辛さや苦しみを理解しようとせず、安易な励ましや否定の言葉を投げかけることは、かえって心を閉ざしてしまう原因になりかねません。

利用者の方は「聞いてほしい」と思っている

「死にたい」という言葉の裏には、「自分の気持ちを聞いてほしい」「自分の辛さを知ってほしい」という強い思いが隠されています。この言葉を聞くと、私たちはつい焦ってしまいがちですが、大切なのは「何か辛い出来事があったのではないか」という視点を持って、まずはじっくりと話を聞くことです。

利用者の方が話し始めるまで、焦らず、静かに耳を傾けましょう。無理に聞き出そうとするのではなく、「もしよかったら、どんなお気持ちなのか聞かせていただけますか」といった姿勢で接することが大切です。


ワンポイントアドバイス:話しやすい空間作りも大切

相手が安心して話せる環境を整えることも非常に重要です。できるだけ個室でお話を聞いたり、座る位置にも配慮すると良いでしょう。例えば、利用者の真正面に座るよりも、横や斜めの位置に座るのがおすすめです。真正面では相手が緊張してしまい、うまく話せないことがあるためです。

まとめ:チームで支え合い、専門家との連携を

利用者の方の中には、精神疾患を抱えている方もいらっしゃいます。そして、残念ながら本当に自殺を試みられる方もおられます。そのような場合は、決して一人で抱え込まず、迷わずかかりつけのドクターに相談してください。専門家の視点から適切な助言や支援が得られます。ドクターに相談する際には、いつ、どのような状況で『死にたい』という言葉が出たのか、その時の利用者さんの様子、具体的な言動などを詳細に伝えることが重要です。また、その後の利用者さんの状態変化についても、継続的に報告しましょう。緊急性が高いと感じる場合は、迷わずすぐに連絡を取ることが大切です。

また、利用者の方からの「死にたい」という言葉や、その後の対応については、必ず職場で共有するようにしましょう。チーム全体で情報を共有し、連携して支え合うことで、利用者の方にとっても、そして私たち支援者にとっても、より良いサポート体制を築くことができます。


忘れてはいけない、支援者自身の心と体

利用者さんの辛さに寄り添うことは、私たち支援者自身の心にも大きな負担がかかることがあります。一人で抱え込まず、職場の同僚や上司、信頼できる人に話を聞いてもらったり、専門のカウンセリングサービスを利用したりするなど、自身のセルフケアも大切にしてください。あなたが心身ともに健康であることこそが、利用者さんを支え続ける上で不可欠です。

利用者の方の言葉に真摯に向き合い、寄り添うこと。そして、必要に応じて専門機関やチームと連携すること。これらが、利用者の方の命を守り、支える上で非常に重要なこととなります。利用者さんの「死にたい」という言葉は、私たちにとって重く響くものです。しかし、それは同時に、「誰かに助けを求めているサイン」でもあります。私たちが寄り添い、適切に繋がることで、利用者さんが再び希望を見つけ、穏やかな日常を送れるようになる可能性は十分にあります。チーム一丸となって、利用者さんの心に寄り添い、支え続けていきましょう。

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